ホーム / 青春 / 雪の精霊~命のきらめき~ / 第100話 共同戦線、さっそく発動

共有

第100話 共同戦線、さっそく発動

作者: あるて
last update 最終更新日: 2026-01-24 14:00:27

「ってなわけで今日から生徒会業務を手伝ってくれるようになった石川穂香さんです。いろいろ教えてあげてくださいね」

 さっそくその日の放課後、他の生徒会役員に穂香を紹介。

「雑用だけでも手伝ってもらえるのは助かるけど、今年の任期はもうすぐ終わりだぞ」

 谷村先輩の言うとおり、間もなく次期の生徒会長と副会長を選出されるための選挙がある。

「次期もわたし立候補するつもりなんで。運よく当選したら続行して手伝ってもらうつもりです。引継ぎを早めにできると思えばお得でしょ。まぁ落選したら目も当てられないんだけど」

「ゆき会長が落選するビジョンが見えないな。まぁそういうことならこちらとしては文句もない。それじゃ、さっそく仕事を覚えてもらうことになるんだけど、庶務同士ということで文香さんにお任せしていいのかな?」

「はい、お任せください! それじゃ、穂香。まずは資料整理するから資料室に行こうか」

 2人連れ立って生徒会室を出ていってしまった。資料室は上の階にあるからだ。

「それで、昨日から大騒ぎになってる岸川琴音のことと何か関係があるんですの?」

 2人がいなくなった途端、佳乃先輩が尋ねてきた。

 そうだよね、時期的におかしいしタイミングが良すぎるよねぇ。

「あはは、やっぱりわかっちゃいますか。2人が言うにはわたしがいつ襲われても守れるように下校まで一緒にいてくれるということらしくて」

 ボディーガードが必要ってわけでもないんだけどね。2人が何からわたしを守るつもりなのか、よく分からない。

「そういうことですか。愛されてますわね、ゆき会長」

 上品に笑う佳乃先輩。

 友人として大切にされてるなって思う。

「えぇ、本当にいい友人関係に恵まれました」

 思ったことを言っただけなのに、なぜか呆れ顔の先輩方。

「こんなのを相手にしたらあの2人も大変だろうなぁ」

 こんなのってわたしのこと? どういう意味かな、睦美先輩。

「ゆき会長にとっては恵まれていても、あの2人にとってはとんだ災難ですわねぇ」

 

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 雪の精霊~命のきらめき~   第106話 覚悟はできた。だけど……

     病院から帰ったころにはすっかり深夜だった。 家族のみんなはもう就寝してしまっている。よかった。 正直既に全身が痛い。やはり全力で動いたことのツケがしっかりと回ってきている。 歩くだけでも辛い今の状態を、誰にも見られずにすむのはありがたい。 なんとか自分の部屋にたどり着き、着替えもせずそのままベッドに倒れこんだ。 目を閉じると浮かぶのは姉妹たちの怯えた表情。まさかわたしがあんな顔をさせることになってしまうなんてね。 自嘲気味に笑いながら、自分の覚悟を決める。 明日、みんなに伝えなきゃ。 翌朝、痛む体をどうにか引きずり、朝食を作ろうとリビングに下りていく。階段を一段下りるたび、全身を駆け巡る痛み。 どうにか下の階にたどりつき、キッチンを覗くとお母さんがすでに朝食を作っていた。 家族の前で痛そうな姿を見せるわけにはいかないので、姿勢を正し痛みをこらえてお母さんに近付く。「どうしたの? 朝食ならわたしが作るのに」 お母さんは何も言わずにちらりとわたしを見ただけで朝食を作り続ける。「お母さん?」「わたしが何も気づかないとでも思っているのかしら? 手足を動かすだけでも辛いんでしょう。部屋に戻るのもキツイだろうからそこのソファーで横になっていなさい」 そうか。全部を知ってるお母さんには強がっても意味ないよね。ちょっと怒ってる?「ごめんなさい、ありがとう」 素直に厚意を受け取ってソファーに転がる。そこまでの一連の動作だけでもきつかったけど、横になってしまえば随分と楽になった。 昨日は遅くなったのでまだ少し眠い。気だるさを感じたわたしは横になったまま目を閉じた。「ゆき、朝ごはんができたわよ」 お母さんに揺り起こされて気が付いた。いつの間にか眠っていたらしい。やはりまだ疲労が抜けていないのかもしれない。 どうにか起き上がり、テーブルの方を見て驚いた。 姉妹たちが全員揃ってもう席についている。お母さんが起こしに

  • 雪の精霊~命のきらめき~   第105話 あの雪の日②

     心肺停止? でも今でもゆきは元気にしてるじゃねーか。「ゆきは一度死んでいるのよ」 そんな……。ゆきの姿を思い浮かべる。あいつが一度死んだ? その事実がまだうまく呑み込めない。 他の姉妹を見ても、みんなショックを受けて固まってしまっている。 今の元気なゆきの姿からは想像もつかない。ひとつだけ心当たりがあることと言えば……。「あなた達、4分間の壁って聞いたことある?」 突然母さんが質問を振ってきた。全員が首を横に振る。「そう。これから何かの役に立つこともあるかもしれないからよく覚えておいて。人間はね、心肺停止から3分で生存率が50%に下がる。 そして4分を過ぎると高い確率で脳に障害が残ったり、下手をすると植物状態になったりするのよ」 脳の障害……。まさか!「あの子の心肺停止の時間は6分。奇跡的に息を吹き返したけど、なんらかの障害が残ることは間違いないとまで言われたわ。 幸い、言語や行動に大きな障害が残ることはなかった。それでもあの子の世界から全ての色は消えてしまった」 やっぱり……。ゆきの目はそんな事情で……。 ひとり知らされていなかったひよりが驚いた表情のまま硬直している。その気持ちは分かる。あたしだって最初に聞かされた時はなんて声をかけていいか分かんなかったもんな。「ひより以外はみんな聞いていたみたいね。ひより。気持ちをしっかり持って。ゆきの目はね、全ての色が見えないの。 普通は色覚障害というと光の三原色のうちひとつかふたつが見えないだけでなんらかの色は見えるのだけど、ゆきの場合は全色盲といってすべての色が見えず、完全に白と黒しかない世界に住んでいるのよ」 驚きのあまり固まっていたひよりが目に涙をいっぱいに溜めながら声を上げた。「でも! ゆきちゃんは普通に生活してたよ? 信号の色もちゃんとわかってるもん!」「あの子の本棚見たことある? その中に色彩図

  • 雪の精霊~命のきらめき~   第104話 あの雪の日①

     パトカーと救急車が家の前に停まり、警察官や救急隊員が忙しなく動き回っているせいで近所の人の目をひいてしまい、外はにわかに野次馬でごった返すほどに注目されてしまった。 強盗が入ったなんて一大事だもんね。 みんなそれぞれ警察から事情聴取を受け、最後にわたしの番が回ってきた。 他の姉妹には聞かれたくないので玄関先に移動して聴取を受けることにした。担架に乗せられ、運ばれていく男の姿が見えた。「いてーよー。なんなんだ、あの女ー。化け物かよ」 やかましい。誰が化け物だ。それだけ話せる元気があるなら十分だろ。 もっと恐ろしい目に遭わせてやればよかったと、背中がチリっとするのを感じた。「やれやれ、ゆきさんの実力は知っているけれど随分な無茶をしたね」 わたしの気配を察したのか気安い感じで話しかけてくる警察官。 担当に当たってくれた警察官は顔見知り。同じ柔道場に通う松田巡査だった。 事情聴取ということだったのでわたしが帰ってから見聞きしたことを簡単に説明した。「なるほどね。事情は大体わかったよ。犯人は強盗未遂ってことで厳罰を食らうだろうけど、その前に治療してやんないとだ」 苦笑交じりに冗談っぽく語る松田さん。普通ならわたしが過剰防衛に問われてもおかしくない。 脱臼した肩は元に戻しておいてやったけど。 戻すときも痛いってうるさかったな。「松田さん、強盗未遂じゃないです。強盗致傷、もしくは強殺未遂ですよ」 そう言ってまだ血がついたままの左腕を見せた。「なるほど」 そう言って傷口をじっと見つめる松田さん。やがてため息をこぼしながらやれやれと言った様子。「ゆきさん、これ絶対に狙ってやったでしょ。ま、これならちゃんと正当防衛が成り立つか。それにしても薄皮一枚だけ切らせるとかどんな動体視力してんだか。一応写真も撮るし、病院に行って治療も受けてもらわないといけないよ。診断書はもらっておいてね」 すっかり血も止まり、凝固しかけているのを見て心底感心したようだ。「承

  • 雪の精霊~命のきらめき~   第103話 初めての解放

     開け放たれた玄関のドアから中の様子を伺う。 静かだ。 だけど、その静けさの中にひよりのすすり泣くような声を確かに聴いた。 全身が熱くなる。今まで抱いたことのないような感情が体を支配する。 突如響いた悲痛な声。「いやぁ! 誰か助けて!」 ひよりの声にさらに体が熱くなる。燃え上がってしまいそうだ。「おら、うるせぇよ! いい加減諦めて大人しくしろや!」 強盗だ。見知らぬ男の声で確信に変わった。心の奥底に秘めていた何かに火がついた。 気配を殺し、音をたてないようにしながらリビングのドアを開ける。 そこに広がる光景をみて我を忘れそうになった。 リビングの床に転がるひより。その上に馬乗りになっている年配の男。手にはナイフ。 他の姉妹とお母さんは隅に固まって身動きが取れない状態。下手に動いたらひよりが何をされるか分からないからだ。 姉たちがわたしの存在に気が付いた。救いを求める瞳。よほど脅されたのだろう、あのより姉ですら涙を流して怯えている。 こちらを見ないようジェスチャーで合図するとみんな慌ててわたしから視線を逸らした。わたしの存在を確認して少し安堵した様子。 幸い男には何も気づかれなかったようだ。男から見えていないということはひよりからもわたしは見えていない。まだひよりは恐怖の中にいる。早く解放してあげないと。 足音を忍ばせ、男の背後まで近づいたときに聞いた言葉。「へへへ。前から目をつけてはいたがこんなに上玉ぞろいとはついてるぜ。じっくり楽しませてもらうとしようか」 その反吐の出そうなセリフを聞いた瞬間に、わたしの中の決して切れるはずのなかったものが音を立てて弾け飛んだ。「おい、何やってんだ」 突如、背後の至近距離から聞こえた声に驚いた男はすかさずナイフを持った手をこちらに向ける。「誰!……だ?」 言い終わる前に男の体は宙を舞っていた。振り返るときの勢いを利用したものの半ば強引に投げたため筋肉が

  • 雪の精霊~命のきらめき~   第102話 雨の中、物思いにふけるゆき

     年度が変わって4月。 今年になって一番変わったことといえば、かの姉が映像デザイン系の学校に進学したこと。 わたしの動画編集を手伝っているうちにすっかり興味を持ってしまったようで、本格的にその道に進みたいと思ったそうだ。 わたしの活動によって人生の目標ができたのならそんなに嬉しいことはない。 前にも増して編集作業を手伝ってくれているので、今やもうわたしが編集にタッチすることはほぼないくらいになっているんだけど、就職先をここにしちゃだめだよ? みんなはそれぞれ自分の道を歩んでいってもらわないと。 そして変わったことと言えばもうひとつ。「ゆきちゃーん! また今年から一緒だね!」 ひよりがわたし達の通う学園に合格したことだ。 あれだけ成績が怪しかったのに、よくがんばったものだ。えらいぞ! ひより。お兄ちゃんは誇らしいです。 毎日楽しみにしていたわたしとのダンス練習も封印して、勉強に励んでいた姿をちゃんと見てたからね。 わたしもよく付きっ切りで勉強を教えてあげたりしていたから、喜びもひとしおだ。「これでまた中学の時みたいに3人で通えるね!」 うちはきれいにひとつずつ年の離れた姉弟が4人もいるのだけど、年の離れた姉妹や長子、末っ子はどんなにがんばっても1人で学校に通う時期というものができてしまう。 ひよりもこの1年間、寂しい想いをしたのだろうかと思うと、合格した本人よりもわたしの方が感極まってしまいそうだ。 より姉は年が離れているからもっと一人の時間が長いんだけど、そこは可愛がられるのが末っ子の特権とでも言いましょうか。小さいころからひよりがかわいくて仕方ないわたしにとって、甘くなってしまうのはどうしようもないことなんだもの。 でもこれであと2年間、ひよりに寂しい想いをさせなくてすむ。高校生にもなれば精神的にも中学生の時よりも成熟してくるし。 わたしの卒業するときが潮時だな……。 それからは生徒会長として忙しい日々を過ごしながら、プライベートでも配

  • 雪の精霊~命のきらめき~   第101話 実はこれが前例になってしまったりして

     あの後、琴音ちゃんはしばらく姿を現すことはなかった。 連行されたのがショックだったのか、仕事が忙しいからなのかは知らない。両方のような気もする。 そして間もなく生徒会長選挙の開催。 今年も対抗馬が不在で、わたしの演説に対する生徒たちの熱狂的な拍手により信任投票もなしで会長職就任。いいのかなぁ。 意外だったのは副会長に文香が立候補したことだろう。 普段は引っ込み思案な文香が立候補のような目立つ行動をとるとは思ってもみなかった。「どうせならすぐそばでゆきちゃんを支えてあげたいからね」 そのセリフになぜだか照れてしまった。 もうひとつ意表を突かれたのが、文香と投票数で争ったのがあの「昭和アニメ先輩」富樫先輩だったこと。 いつのまにやら服装も頭髪も普通になっていて、メガネまでかけていたので最初は誰だか分からなかった。名前を聞いてびっくり。そのメガネ、絶対伊達だろ。 だけど、やっぱり去年わたしと一緒に生徒会を盛り上げた実績のある文香が票数を争ったとはいえけっこうな大差をつけての当選。 よかった。あんなのと生徒会室で一緒に過ごすなんて考えただけでゾッとする。 文香よ、立候補してくれてありがとう。 そして書記には庶務をやっていた穂香が就任。 そして会計には……。泣いて頼むもんだから仕方なく。本当に仕方なく御手洗薫先輩を起用。 今年で一緒にいられるのも最後だからと泣かれては無下にもできない。そのまま風紀委員長でよかったのに……。 そして庶務には|鬼嶋健司《おにしまけんじ》先輩を登用した。わたしが会長職についてすぐにいわゆるイジメ問題で被害者だった先輩だ。 あれからたまに稽古をつけてあげるようになって、今ではすっかり意気投合していたのでわたしの依頼に対して二つ返事で了承してくれた。 これで今年度の生徒会の体制が整った。 そしてわたしの16歳の誕生日を盛大に祝ってもらい、2か月もしないうちに迎えるのは

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status